今日も僕は、長い坂を登る。

僕が通う大学は丘の上みたいな場所にあるため、学校へ行くには坂を登らなければならない。これが結構大変で、かと言って毎日通えば自然と運動不足が解消されるといった類のものでもなく、毎朝僕はそこはかとない徒労感とともに大学へと向かう。

僕は法学部で、法学部の授業は大抵が講義である。成績評価は試験一発で決まることが多いので、一見授業に出なくてもよさそうに見える。しかし、法学部で学ぶ内容はとても難しいため、凡人が独学で何とかできるようなものではない。それゆえ、単位が欲しいなら授業に出席するに越したことはないのである。もっとも、昔から長時間話を聴くのが苦手で、高校時代に偉い人の講演会があったときも爆睡をかましていた僕が、大学の授業でどうなるのかについてはお察しの通りだが。

僕が通う大学には多くのサークルがある。僕は合唱サークルに所属しているのだが、高校時代まで合唱とは縁のない人間だった。大学入学したばかりの頃、行く宛もなくフラフラしていた僕に、美人の先輩から「体験練習に行きませんか?」と声をかけられたのが始まりだった。突然のことで「はい!」と返答してしまった僕は、考える余裕もなく先輩とともに体験練習へ向かった。『合唱なんて、学校でやった程度のものだろう』そう思っていた僕は、合唱の響きに圧倒された。合唱に魅せられた僕は、その日のうちに合唱サークルに所属したのだ。

サークルの練習は週三回。曜日は固定されておらず、毎回打ち合わせをして練習日が決まるのだが、土曜にも練習が入る=休日を取られるのには少なからず不満はあった。しかし、新しい趣味ができたことで、少し僕の世界も広がったのは確かだ。

色々書いたが、今の生活はそこまで悪くはないと思っている。そして明日も僕は、そこはかとない徒労感を胸に坂を登っていくだろう。